ごきげんよう、鉄紺忍者です。
今回から箱根駅伝タイム解析と題して、
1区〜10区の東洋大学の選手のラップタイム計測のほか、先頭チームとの比較を行なっていきます。
今回は1区・児玉悠輔選手についてです。
↓他区間のタイム解析記事はこちら
【1区・児玉悠輔選手】63分40秒 ⑰
【2区・石田洸介選手】70分04秒 ⑲
【3区・小林亮太選手】62分33秒 ⑨
【4区・柏優吾選手 】63分04秒 ⑬
【5区・前田義弘選手】71分21秒 ⑤
【6区・西村真周選手】60分13秒 ⑬
【7区・佐藤真優選手】64分35秒 ⑮
【8区・木本大地選手】64分16秒 ①
【9区・梅崎蓮選手 】68分36秒 ④
【10区・清野太雅選手】70分04秒 ⑨
↑箱根駅伝1区(大手町〜鶴見)のコース紹介です。
1区・児玉悠輔(4年)
■結果
予想タイム:61分52秒 ⑦(1410-2830-4320-5750)
実際タイム:63分40秒 ⑰(1519-3019-4453-5941)
予想タイムの甚大なズレに関しては、私が1区のハイ/スローペースの読みを外していたことによるものです (汗)
今回は東洋の石田選手も含めて、前回大会でまだ2区を走るほどではなかった選手が二カ年計画で力をつけ満を持して登場してきたという傾向が強かったですね。
そして元々2区だった田澤選手・近藤選手・ムルワ選手などがそれらを迎え撃つような形で、結果的に本来の「花の2区」にふさわしいエースランナーが勢揃いしました。
逆に1区は各校の監督が思い切って、例年なら復路の7区あたりに回ってもおかしくないような割と新人選手を使ってきました。それだけに、経験値のある児玉選手を起用した東洋はまずスタートで勝ちきりたかったところですが……。
■比較対象紹介
明治大・富田選手(4年)
13:41/28:35/62:10
全日7区8位 (51:36)
東洋大・児玉選手(4年)
13:53/28:45/63:52
出雲1区13位 (23:31)
全日3区10位 (34:33)
富田選手は明治大学のエースですね。明治の伝統らしくトラックで好タイムをマークしながらも、長い距離になっても学生ハーフ4位、予選会チームトップの10位と安定感のある選手です。全日本大学駅伝7区では東洋の2年生・梅崎選手が区間タイムで1秒勝っているものの、いつ追いついてくるかヒヤヒヤしていたのが正直なところでした。
■計測
00km 明治・富田(4年) — 東洋・児玉(4年)
01km 02:56 (2:56)
02km 06:09 (3:13)
03km 09:13 (3:04)
04km 12:18 (3:05)
05km 15:19 (3:01)
06km 18:24 (3:05)
07km 21:29 (3:05)
08km 24:31 (3:02)
09km 27:23 (2:52)
10km 30:19 (2:56)
11km 33:13 (2:54)
12km 36:09 (2:56)
13km 39:05 (2:56)
14km 41:59 (2:54)
15km 44:53 (2:54)
16km 47:48 (2:55)
17km 50:42 (2:54) — 50:43 (2:55) +0:01
18km 53:32 (2:50) — 53:39 (2:56) +0:07
19km 56:18 (2:46) — 56:42 (3:03) +0:24
20km 59:00 (2:42) — 59:41 (2:59) +0:41
21km 61:55 (2:55) — 62:50 (3:09) +0:55
FIN 21.3k 62:44(2:43) — 63:40 (2:47) +0:56
※16kmまでは大体同じラップのはずなので比較は省略しました。
■5km:15分19秒 (15分19秒)
まさかここまでのスローになるとは。
最初の1kmは2:56と普通のペースでしたが、そこから1-5kmは平均3:06/kmと、それより10秒も落ちて推移したことになります。
■10km:30分19秒 (15分00秒)
ようやく3:00/kmペースにまで戻りました。
新八ツ山橋が終わった後の下り、8kmあたりから前に出ようという選手が出始めたことで普通くらいのペースまで上がりました。
児玉選手は最後尾でしっかり集団全体を見渡しながら、無駄な動きもなく目立たないよう走っているように見えます。
■15km:44分53秒 (14分34秒)
平均2:55ペースまで上がってきました。
児玉選手の動きがだんだん集団から出たり入ったりするようになり、「最後尾に隠れる」から「最後尾でついていく」に変わりつつあるのが気になります……。
■20km:59分41秒 (14分48秒)
先頭集団は六郷橋より1キロ手前、17kmでペースアップ。
しかし、東洋の児玉選手はここでまさかの出遅れ。
(どうした!?!?)
ラップ推移を見る限りでは、児玉選手がペースダウンしたわけではなく、元々の2:55/kmくらいのペースにハマってしまって、集団のスパートに反応できなかったようです。
前半のスローペースで、酒井監督がインタビューでも言っていた『ブレーキ筋』を使ってしまっていたのかなぁ……。
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2023年1月1日・酒井俊幸監督インタビュー/集英社オンライン
逆に、スローペースで抑えて入っちゃうと、安全策のつもりが、普段は使わない『ブレーキ筋』を使ってしまうことになり、走りにくくなる。
特に、厚底シューズを履いたときに遅く走ると、速く走るための型から外れてしまうんですね」
https://shueisha.online/sports/90597
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逆に他校の中にはもしかしたら箱根デビュー戦でまだスタミナに不安があった選手もいたかもしれませんが、このスローペースで助ける形になってしまいましたね。
先頭の明治・富田選手は20キロを59分00秒、この5キロ14分07秒で大きくペースアップ。ここだけで41秒も差をつけられてしまいました。
■FINISH 21.3km:63分40秒 (03分59秒)
遅れ始めた17kmからは平均3:00/kmを超えるペースになっていることから、六郷橋からスパートどころではなく、もうギリギリなんとか振り絞って中継所まで持ってきてくれた形だったようです。
(今シーズンは昨年度よりさらに10000mとハーフの力がついていましたし、一体何が起きた???という感想です😭)
推測ですが、これは出雲駅伝で1区13位となってしまったことがずっと尾を引いていますね……。中央・吉居大和選手についていって出遅れてしまったから、今回は何があっても後ろで慎重にレースを進めよう、と固くなりすぎたかもしれません。
2018年の箱根駅伝のスタート前に、酒井監督が西山選手に対して「動きが固くならないように前のほうで」とアドバイスしていたのを思い出しました。(もうひとつの箱根駅伝の映像)
全日本1区の奥山選手に対しても、
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「もともと調子がいいのと、ラストの方が得意な子」という理由で、酒井俊幸監督は1区に奥山輝(3年、浦和実)を起用。しかし「もっと積極性があれば良かった」。
https://4years.asahi.com/article/14763298
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というコメントがありました。
2018年頃など良い時は前のほうでレースを進められ、それにより良い結果が出る好循環にあったのが、今シーズンは出雲駅伝の失敗が強烈に印象づいてしまって「さすがにもう失敗できない」とガチガチになり、負のスパイラルに陥ってしまったかもしれませんね。
積極的に行って失敗すると「隠れていたほうがよかった」となってしまいますし、本当に難しいところだと思います。
「走り始めの形状(ペース)を記憶する」という現代のカーボンプレートシューズの特性にあった走り方が求められる、というのはあると思います。だからこそ2022年は夏明けに1500mを走るなど、スピード底上げの取り組みがあったかと思うので、何も策を講じていないわけではないですよね。
チームの伝統としての成功体験と、現代の道具を使いこなす最先端のトレンドとのすり合わせが、今後も続いていくのだと思います。
終わったことは仕方がない、ということで児玉選手には実業団の「愛知製鋼」でも引き続き、できれば厚底シューズでの1区の理想の走り方を追求していってほしいですね。それが、一緒に練習を共にしていた後輩たちのヒントにもなるかもしれません。
■2023年シーズンに向けて
箱根駅伝になって急に、児玉選手がいるのに1区で使わないという選択はなかなか難しかったかと思います。しかし児玉選手が卒業する来季は、必然的に新たなスターターを起用することになります。
つまり、宇野→田口→西山→児玉と続いてきた系譜を誰が引き継ぐか、ですね。
しかし私の中では最近、
「スターターは育てなくてもいいのではないか」という考えが強まっています。
どういうことかといいますと、最近私が気になっているのが、駒澤大学の大八木監督が出雲駅伝の1区に花尾選手を起用していた点なのです。
花尾選手は間違いなく駒澤の主力ではありますが、関東インカレに二年連続ハーフマラソンで出場していることからも、「スタミナ型」の選手だと思うのです。
5000m13分51秒は駒澤の出雲メンバー6名の中で最も遅い記録です。
まぁそれでも十分速いですが、他が13分20秒〜30秒台ですのでね😅
ということはラストのキレだけで言えば、おそらく彼よりまさっている選手が他の5名の中にもいたのではないでしょうか。
それでも花尾選手は、1区序盤に飛び出して圧倒的リードを作っていた吉居大和選手を、最後に「ロングスパート」で追い詰める区間2位で仕事をこなし、チームの優勝に貢献します。
「ああ、こういうインカレでハーフ走るようなスタミナ系の選手の1区も安定してていいな」と思った瞬間でした。
ところが全日本・箱根ではそれまで大学駅伝の出場がなく秋シーズンで28分29秒をマークして台頭してきた円選手にあっさりスターターを交代させています。
(↑このタイム出した時、同じ組に東洋の選手もいました。東洋の石田選手がペースメイクして28分39秒、熊崎選手が28分36秒、九嶋選手が28分45秒をマークしたあのレースです。)
円選手は決して1区専任というタイプではない気がしますし、確か倉敷高校が都大路で優勝争いしていた時も後半のほうを走っていたような記憶があるので、むしろ1区のイメージのほうがなかったです。
全日本後の上尾ハーフでは、61分51秒というかなりの好タイムで、スタミナもアピールしています。
つまり適性や実績よりも、調子で1区を選んでいるように見えます。
これは選手層があるからこそ成せる技なのかもしれませんが、実績よりも調子を重視するのは東洋の酒井監督の考えにも近いと思います。
今回の箱根駅伝1区のメンバーを見ても、1区専任というよりかは、先ほど述べたように「7区」タイプという感じの選手が多かったように思います。
(実績はそこまででも好調でガンガン飛ばしていける選手)
2位の中央大学を見てみても、出雲1区の吉居大和選手、全日本1区の千守選手のどちらでもなく、出雲駅伝で5区を走り、12月3日の記録会で28分26秒をマークした1年生の溜池選手が箱根1区でしたよね。(私は溜池選手まさに7区で予想してました)
であれば、出雲駅伝は箱根駅伝を見据えスターターを探すのではなく単純に走力で、
例えば「梅崎選手」などを選び、まず出雲駅伝を安定して上位で終えてチームの勢いをつける。
(一部と二部のインカレハーフ2位同士ということで花尾選手は東洋でいう梅崎選手だと思っています)
そして全日本大学駅伝では秋に伸びてきた選手に任せ、よければそのまま。箱根で起用できないようであればまた箱根で調子の良い選手を起用する。というのが良いのではないでしょうか。
気持ち的には田口選手で三年連続、西山選手で二年連続成功したような例を踏襲したいところなのですが、最近のトレンドに合わせるとすれば、例えば今年なら熊崎選手が走れていたら、
『1区熊崎・7区児玉』
ぐらいの発想の転換が必要な時代になってきているのかもしれません。
■第100回大会の箱根駅伝1区は?
現時点では、上記の理由から1区適性を考慮せず、
10000m持ちタイムTOP3の
・熊崎選手(新4年)28分36秒
・緒方選手(新2年)28分36秒
・石田選手(新3年)28分37秒
を推しておきます。
一応三人とも、それぞれ高校時代にチームのエースとして1区を走ってはいる選手です。
■次回予告
次回は、5区・前田義弘選手 のタイム解析を行なっていきます。
↓他区間のタイム解析記事はこちら
【1区・児玉悠輔選手】63分40秒 ⑰
【2区・石田洸介選手】70分04秒 ⑲
【3区・小林亮太選手】62分33秒 ⑨
【4区・柏優吾選手 】63分04秒 ⑬
【5区・前田義弘選手】71分21秒 ⑤
【6区・西村真周選手】60分13秒 ⑬
【7区・佐藤真優選手】64分35秒 ⑮
【8区・木本大地選手】64分16秒 ①
【9区・梅崎蓮選手 】68分36秒 ④
【10区・清野太雅選手】70分04秒 ⑨
コメント
西村君1区はどうでしょうか。思い切った走りが出来る選手ですし、そういう選手を使っても面白いんじゃないかなと。将来的にさらに成長すれば田口みたいな自分からレースを動かすような走りも出来ると思います。
おお、絶妙なところですね!
私は考えていませんでしたが素直に良いなと思いました。
主導権を握って走ってくれそうですね!