ごきげんよう、鉄紺忍者です。
箱根駅伝タイム解析シリーズ、
今回は3区・小林亮太選手についてです。
↓他区間のタイム解析記事はこちら
【1区・児玉悠輔選手】63分40秒 ⑰
【2区・石田洸介選手】70分04秒 ⑲
【3区・小林亮太選手】62分33秒 ⑨
【4区・柏優吾選手 】63分04秒 ⑬
【5区・前田義弘選手】71分21秒 ⑤
【6区・西村真周選手】60分13秒 ⑬
【7区・佐藤真優選手】64分35秒 ⑮
【8区・木本大地選手】64分16秒 ①
【9区・梅崎蓮選手 】68分36秒 ④
【10区・清野太雅選手】70分04秒 ⑨
↑箱根駅伝3区(戸塚〜平塚)のコース紹介です。
3区・小林亮太(2年)
■結果
予想タイム:63分27秒 ⑪(1425-2900-4400-5915)
結果タイム:62分33秒 ⑨(1412-2828-4323-5822)
デビュー戦にして3区62分半の大健闘でした!
予想よりも1分速かった!
10000mPBが29分27秒の選手とは思えないような速い入りを見せたほか、
20番目でスタートという難しい位置から16番目まで順位を上げたことで、
その後の巻き返しに希望を持たせてくれたと思います!
1年生だった前回の箱根ではエントリー圏外でしたが、
2年生となった2022年を振り返ると、
5000mは5回出場し全て安定して14分30秒以内。
9月の早稲田大記録会ではついに13分55秒で13分台の大台に乗りました!
ハーフマラソンのスタミナについても、
3月の立川ハーフで64分17秒をマークし「面白い!」と思って見ていましたが、
さらに11月は難コースとされる世田谷246ハーフをPBの64分05秒で走破しています。
そして今年1月の箱根駅伝の走りにつながるわけですね。
とはいえ、まさか冬の間にここまで成長していたとは驚きでした!
■比較対象紹介
中央大・中野選手(3年)
13:39/28:00/64:03
出雲3区7位 (24:12/8.5km)
東洋大・小林選手(2年)
13:55/29:27/64:05
出場なし
中野選手は、大和選手とともに中央の看板選手。
10000mはチームトップの28分00秒86、
出雲駅伝ではエース区間3区を走っています。
前回箱根4区でも好走しているように登りが得意で、
今年は2区という噂もあったようですが、
一時不調で全日本も欠場していたことから
比較的負担の少ない3区での起用となったようです。
■計測
中央・中野(3年) — 東洋・小林(2年)
01km 02:48 (2:48) — 02:51 (2:51) +0:03
02km 05:31 (2:43) — 05:29 (2:38) -0:02
03km 08:16 (2:45) — 08:21 (2:52) +0:05
04km 11:08 (2:52) — 11:16 (2:55) +0:08
05km 14:01 (2:53) — 14:12 (2:56) +0:11
06km 16:43 (2:42) — 17:02 (2:50) +0:19
07km 19:30 (2:47) — 19:49 (2:47) +0:19
08km 22:22 (2:52) — 22:40 (2:51) +0:18
09km 25:14 (2:52) — 25:35 (2:55) +0:21
10km 28:08 (2:54) — 28:28 (2:53) +0:20
11km 31:04 (2:56) — 31:23 (2:55) +0:19
12km 34:00 (2:56) — 34:22 (2:59) +0:22
13km 36:58 (2:58) — 37:27 (3:05) +0:29
14km 39:56 (2:58) — 40:26 (2:59) +0:30
15km 42:54 (2:58) — 43:23 (2:57) +0:29
16km 45:54 (3:00) — 46:25 (3:02) +0:31
17km 48:54 (3:00) — 49:27 (3:02) +0:33
18km 51:52 (2:58) — 52:29 (3:02) +0:37
19km 54:47 (2:55) — 55:24 (2:55) +0:37
20km 57:43 (2:56) — 58:22 (2:58) +0:39
21km 60:40 (2:57) — 61:21 (2:59) +0:41
FIN 21.4k 61:51 ① (4:08) — 62:33 ⑨ (4:11) +0:42
先頭の中野選手は区間賞で、ペースも全体通して安定しており、
今後62分切りのお手本にできそうだなと思いました。
みんな他校の選手はどうやって61分台出しているんだろう?と疑問だったので、
今回私としても、中野選手のラップ推移は大変勉強になりました。
(もう28分10秒くらいで入る時代になっているのですね……!)
小林選手のほうも、ペースは全体的に安定していて、
特にデビュー戦の選手に多く見られるような中盤の大きな落ち込みも見受けられませんでした。
そして驚いたのが、彼、時計をつけていなかったんですよね……!
それ以前のレース写真を見る限りでは着けていたようなので、
もしかすると20番目という展開から判断して
あまりタイムを気にしすぎずにとにかく行けるだけ行こう、
という作戦だったのかもしれませんね!
それでは、小林選手の走りを5kmごとに区切って見ていきたいと思います。
■5km:14分12秒 (14分12秒)
5.4kmあたりで遊行寺の急激な下り坂があります。
最初の5kmはそこを迎えるまでの助走区間。
1kmまではほぼ平坦〜わずかに登り、そこからは遊行寺ほどではありませんが、なだらかに下っていきます。
小林選手の5kmの入りは14分12秒あたり。
これは94回・95回大会で往路優勝した時と同じくらい。良い時の東洋大学のペースです。
スタート時の位置関係は
・17位 (38秒前) 関東学生連合
・18位 (10秒前) 専修大
・19位 (2秒前) 立教大
・20位 小林選手 東洋大
このようになっていましたが、
小林選手が早くも一気にまとめて17位まで追いつき、
後ろ3チームを引き連れた集団走に。
これで20位→17位タイに浮上です。
■10km:28分28秒 (14分16秒) 給水:渡辺亮太くん
特にこの5-10kmのタイムが素晴らしかったですね。
前半の下り基調のコースを生かし、
10000mの自己ベスト29分27秒よりも1分速いペースで(!)
ガンガン飛ばしています。
5kmまで4人だった集団は
藤沢の定点7.6kmの時点で後ろに立教大だけとなり、
10kmまでには、小林選手が抜け出して単独17位となりました。
一つ前の16位帝京大との差も、
スタート時の1分1秒差から30秒差ほどまで詰まってきています。
■15km:43分23秒 (14分55秒) 給水:吉田くん?
10kmまでハイスピードで下ってきて
ここの平坦な区間でまたペースアップするというのはほぼ不可能なので、
ここは14分台で「カバーする」走りが求められます。
小林選手は、海岸線に出てからもしっかりペースを刻めていますね。
この5kmは1キロ3分ペースをギリギリオーバーせず
14分55秒 でカバーできています。
時計してないで、しかも単独走で、
3区の理想的なペース配分ができているのは天才的です👏✨
そして区間賞の中央大・中野選手も、
おそらくこの区間は14分45秒くらいかかっていますね。
しかしさすが終始ペースが安定して速く、1km平均で2秒ずつぐらい離されています。
■20km:58分22秒 (14分59秒)
15-20kmは、前半のダメージ蓄積に加え、湘南大橋の強い横風が追い討ちをかけてくる区間です。
例年のデータを見ても、ここは15分オーバーになってもおかしくないところ。
ですが推定14分59秒! かなり粘れていますね!
一応過去15年分計測した中で最速が、
95回大会2019年の吉川選手2年生(62分33秒)の時で14分48秒。
(青学の森田選手に追われてかなり頑張って逃げていた時ですね)
大学記録を持っている設楽悠太選手(62分13秒)の時が14分55秒。
他はほとんど15分かかっていました。
特に東洋ファンの方にはこのあたりのデータを見ていただくと、
この5kmの難しさがより伝わるのではないかと思います。
さあそして、湘南大橋18.1kmのポイントで順位も16位まで上がってきました!
■FINISH 21.4km:62分33秒 (04分11秒)
小林選手は62分33秒でフィニッシュ!
4区の4年生・柏選手との、豊川高校出身同士のタスキリレーとなりましたね!
今年は復路7・8区でもまた東洋大牛久高校出身同士のリレーでした。
東洋、平塚中継所で後輩先輩リレーしがち。笑
(……酒井監督あるあるでしょうか?🤣)
茅ヶ崎14.3kmの時点では、
当時3年生の修二選手が区間賞を獲得した時とほぼ同じ
62分20秒ペースぐらいで進んでいて、
まだ本当にこのままもつのか判断できないところがありました。
しかしそれがオーバーペースでなく、
最後もそこまで落ちずにしっかり粘ることができていて、
とてもよかったですね!
見事、酒井監督の往路大抜擢に応えました!
区間賞の中央大・中野選手の61分51秒と1分も離れていません (42秒差)。
10000mの自己ベストが1分27秒差あったことを考えるとものすごい大健闘です。
おそらく今10000mに出場したら、大幅にベストを更新できる力は持っているのではないでしょうか。
かなり頼もしい戦力が一枚増えた99回箱根駅伝でした。
■2023年シーズンに向けて
小林選手は今回の走りで、一気にレギュラー格に躍り出たと思います。
3年次は、関東インカレでも出場があるのではないでしょうか!
スピードが活かせて彼の地元の愛知県を走る
全日本大学駅伝でもぜひ見てみたいです!
■第100回大会の箱根駅伝3区は?
・九嶋選手(新4年)
・石田選手(新3年)
・熊崎選手(新4年)
目標:61分50秒 (1400-2810-4250-5745)
中野選手のラップ推移を参考に、
東洋大学記録(62分13秒)を上回る高いハードルではありますが、
61分50秒を目標として考えてみました。
九嶋選手と中野選手はともに2年生だった全日本3区(11.9km)で対決して、
それぞれ34:29と34:30で同じようなタイムで走っています。
また、今回3区を走った小林選手は
合っていそうなので来年も引き続き任せてみたいのですが、
今回出場できなかった松山選手・九嶋選手・熊崎選手を来年は使えるとして考えると、
7区で「復路のキーマン」としてタイムを稼いでもらう手もあると思っています。
本人も元々7区希望だったようですし、どうでしょうか?
■怖いものなしが有利!? 箱根3区の不思議なお話
箱根駅伝の3区というのは、
「学年とタイムの相関が薄い区間」
というデータがあります。
「下級生でもある程度走れるが、上級生だからといって速く走れるとは限らないコース」
と言い換えるとイメージしやすいでしょうか。
まだ全区間のデータ集計はできていないのですが、
体感としておそらく9区あたりは学年との相関が強いのではないかと推測しています。
(≒上級生ほど強い)
箱根駅伝3区では、
たとえば3年生は2年生と比べてタイムが良くなるどころか、0.42%ほどマイナスとなる傾向にあることがわかっています。
(たとえば63分00秒なら、-0.42%すると63分16秒 )
過去4大会平均
1年:63分15秒92 (ヴィンセント選手込みだと63分03秒73)
2年:63分28秒96(1年平均より0.34%マイナス)
3年:63分45秒14(2年平均より0.42%マイナス)
4年:63分11秒09(3年平均より0.90%プラス)
※学年別平均タイムは4年>1年>2年>3年。
※1年生のヴィンセント選手だけあまりに速すぎるのでこの統計からは除外しています。除外しない場合は1年生がトップになります。
本当は、翌年同じ選手が走ったらどれくらいタイムが向上するのか予測したくて集め始めたデータだったのですが……苦笑
試しに3区を複数回走っている選手をランダムにピックアップしてみても、やはり年を追うごとに速くなるとは言いきれないようでした。
二年連続で起用すればもっとタイムが向上するよ!
とは現時点で集計できたデータの限りでは書きづらいところがあるのでした。
(これはあくまで傾向なのでもちろん向上するかもしれません!)
特に3区を61分50秒 で計算したい場合には、
小林選手は7区か10区あたりに回して復路の層を底上げしたほうが、チーム全体としてはタイムが稼げそうです。
特に今年三冠した駒澤大を見て、復路の層の厚さが素晴らしいなぁと感じたというのもあります。
今回の3区で見せてくれたようなガンガン攻める走りは、7区にも合っていると思います。今回3区12km以降を三分ペースでしのいだ走りで、7区中盤の登りも耐えてくれることを期待します。
そして10区なら、最初の10kmを29分20〜30秒くらいで突っ込む→後半粘る走り方で
(今年の青柿選手や助川選手がそうでした)
清野選手の後半上げていく走りとはまた違ったタイプの10区を目指すと、合っているのではないかと考えています。
■次回予告
次回は、4区・柏優吾選手 のタイム解析を行なっていきます。
↓他区間のタイム解析記事はこちら
【1区・児玉悠輔選手】63分40秒 ⑰
【2区・石田洸介選手】70分04秒 ⑲
【3区・小林亮太選手】62分33秒 ⑨
【4区・柏優吾選手 】63分04秒 ⑬
【5区・前田義弘選手】71分21秒 ⑤
【6区・西村真周選手】60分13秒 ⑬
【7区・佐藤真優選手】64分35秒 ⑮
【8区・木本大地選手】64分16秒 ①
【9区・梅崎蓮選手 】68分36秒 ④
【10区・清野太雅選手】70分04秒 ⑨