【3区編】立命館vs名城 ラップタイムを検証【第42回 全日本大学女子駅伝2024】

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立命館大学が9年ぶり11度目の女王に返り咲く形で幕を閉じた、
10/27(日)の「全日本大学女子駅伝」

今回は、3区のラップタイム検証を行なっていく。

※当記事で使用するラップタイムのデータは、推定値を含みます。必ずしも正確ではないことをご了承ください。

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【3区】

立命館の3区は、絶対的信頼のおけるキャプテン

立命館大学は、3区にキャプテンの村松灯(むらまつ とも)を配置。

彼女に全幅の信頼を寄せる十倉みゆきヘッドコーチの言葉が、中継で紹介された。

「どんな展開でも村松がなんとかしてくれるという安心感がある。3区に村松灯を置けるのが非常に大きい」

(一学年下の妹・村松結(むらまつ ゆう)も在籍していることから、しばしばフルネームで紹介される。)

——しかしながら、3区は距離で言えば4番目の長さ。本来はエースが走る区間ではない。それこそ、前年のコース変更によって1キロ短縮された区間であり、かえって重要度は下がっていると考えていいだろう。

実は、立命館大学が今回3区に重点をおいたのには、きちんとした伏線がある。

一年前の全日本大学女子駅伝で、1区村松・2区太田で連続区間賞でリードを広げたものの、3区で名城大学・石松愛朱加(いしまつ あすか)に逆転を許し、優勝を逃す結果となったのだ。

昨年ルーキーだった立命館の3区走者は、石松に抜かれてからしばらく、果敢に食らいつく粘りを見せた。しかし先に述べた法則に漏れず、最終的には大きく失速してしまった。その経験から、今年は最も信頼の厚い村松を3区に配置したのだろう。

区間配置の狙いについては、レース後の杉村憲一監督からの言及も見つけることができた。

「前半の4区間で、なるべくたくさんのリードを広げて、後半は粘りに粘って、最後にトップでゴールするというのが今回の戦略でした」
https://4years.asahi.com/article/15485625

最後の5区・6区が全体の44.2%を占めるコースレイアウトへの変更が、各校の指揮官に、有力選手を後半に配置したくなる心理を生んでいた。

たった2人で半分近くの距離をやり過ごせるのだから、当然の考えだろう。実際、もしアンカー対決までもつれれば、たとえばキャプテンをアンカーまで残していた名城大学を始めとする「後半型」のチームが有利となっていたはずだ。

しかし立命館大学は、後半で逆転されるリスクを背負ってまでも、倍の人員を要する前半4区間「55.8%」の制圧をあえて狙いに行った。

それは、駅伝の「先頭を走る優位性」に基づいた自分たちの作戦を、監督・コーチ・選手たちが最後まで信じ抜いたからこそだろう。それは彼女らの優勝インタビューからも感じ取れた。

前回、一度は打ち砕かれたはずのその信条を、むしろ同じ作戦にアレンジを加える方向で突破を試みてきたあたりに、

立命館大学の復権への執念を垣間見た。

先頭を走っていた村松には、序盤から冷静にペース配分できる余裕があった。—— 全日本大学女子駅伝(2024)

3区のコースは、スタートしてすぐに上り坂が始まり、途中から下り坂へと切り替わる。

最初の1キロ3分9秒が「速すぎた」と判断した村松は、走りながら両手をダラーンと垂らし、リラックスを心がけたようだ。

その絶妙なペース感覚が功を奏し、最後まで失速しないどころか、ラスト1キロの驚異的なペースアップを可能にした。見事区間新記録を樹立し、最後の全日本大学女子駅伝で、悲願の優勝を大きく手繰り寄せる最高の走りとなった。

ちなみに、3区の全体平均タイムは前回から約30秒悪化、逆に4区は前回から約20秒向上していた。

この二つの区間は、3区が仙台中心地から広瀬川方向へ南下、4区が広瀬川から仙台中心地へ北上、というほぼ反対向きの関係にある。したがって、今回の3区は向かい風(南風)だったことが推測できる。

その状況下で区間新、一人勝ちの走り。立命館大学・村松キャプテンの冷静沈着ぶりが光った。

名城は前回3区区間賞・石松で反撃開始のはずが……

名城大学は、前回3区区間賞の石松の走りで、順位を9位→7位に押し上げた。

しかし、立命館大学との差はさらに広がってしまった。

前年(2023)と今年(2024)の名城大学の3区比較

いくら上りといえど1〜2キロのラップが3分36秒というのはさすがに違和感があり、0〜1キロのラップ「3分4秒」とのテレビ実況は計測ミスの可能性もあるのだが、

ひとまず、去年とは違った厳しい展開で同じ走りを再現するのは難しいということだけ伝われば、上記の表の役割としては十分なように思う。

前年の経験はもちろんアドバンテージだが、難しいのは、その年のコンディションによって適切な入りのペースは変化するということ。

当ブログのように平均タイムなどを集計すれば、大まかな傾向を割り出して「理論上はこう」というタイムを算出することもできなくはない。だが、選手たちはそれを走っている最中に感覚で掴んでいくという凄いことをやっているのだ。

3区上位10名 —— 全日本大学女子駅伝(2024)

データを補うならば、偏差値換算を使う手がある。

前回(2023)の名城・石松のタイム18分52秒は偏差値61.1で、今回に換算すると19分07秒に相当する。

立命館から3区で首位を奪い、一人でゲームをひっくり返した去年の石松をもってしても、今回の村松のタイムには及ばなかった可能性が高い。相手を褒めるしかない、というのは、まさにこのような状況のことだろう。

https://x.com/Asuka_i1029/status/1850447642637349261

まとめ

次回は、4区を取り上げていく予定。

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